TIME TURNING (1993) 回転する時間(とき) (30’32”) 今は無くなってしまったNHK電子音楽スタジオで制作した作品です。CC500というスタジオでしたが正式にNHK電子音楽スタジオという名称があったわけではないようです。作品完成の数年前から制作を始めたのですが当時そのスタジオはアナログ機器しかなく、ちょうどアカイのS900というサンプラーが発売されてまもなくだったこともあって私はMIDIシステムを導入すことを提案したのです。結局音声技術者達の同意を得ることが出来てそのスタジオの年間の少ない備品購入予算でパソコン,シーケンスソフト、サンプラーを揃えていただけたわけです。その後さらに購入されたS1000でこの作品は最終的に作られました。それまでの手作業によるテープ切り貼りとかではなくパソコンですばやく色々な実験が出来るようになったわけです。そのような状況の中でこの作品は制作されました。 作品の具体的内容については以下にCDのライナーを引用しました。 1、波(WAVE)(10'47") 2、音(TONE)(4'40") 3,水(WATER)(6'20") 4、雑音(NOISE)(3'36") 5、音楽(MUSIC)(5'15") サンプリングされた音素材をコンピュータで制御,演奏するという方法で全体が構成されています。音素材は、人工的に作られた純粋な音ともいえる「サイン・ウエイヴ」と、人間生活環境に存在するさまざまな具体音のふたつに大別されます。 「波」と「音」は「サイン・ウエイヴ」のみが使われています。発振器から取り出された単音を分割し、人工的に倍音を作りだし音色に変化をつけます。これをエンベロープをつける回路に通して一つのサンプルを作ります。この方法でさまざまなタイプのサンプルを多数用意します。「波」ではアタックのはっきりしたサンプルのみを使い、「音」ではアタックのない柔らかいサンプルのみが使われています。この後の3曲は具体音が使われます。「水」は文字どおり水の音のみが使われています。スタジオで水滴の音をアナログ録音したものを改めてサンプリングしています。「雑音」はNHK局内各所で採取されたさまざまな音が使われています。電話のベルや受話器の音、コンピュータのキーボード打音,ドアの開閉,くず入れにつまずく音,鉛筆が落ちる音、湯呑み茶碗がぶつかり合う音、スタジオにある各種機器の操作音、局内銀行に設置されているキャッシュ・ディスペンサーの操作音などがサンプリングされています。「音楽」では具体音として期成の音楽がサンプリングNHKの資料からN響の演奏,ポップ・ミュージック,楽器の演奏などの一瞬を取り出しサンプリングしています。これと「波」で使われた「サイン・ウエイヴ」が組み合わされています。時間というキャンバスにサンプリングされたさまざまな素材をいかに貼り付けるかということがこの作品の中心課題です。 |
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TIME TURNING が収められているCD「PRISMATIC EYE」フォンテックFOCD3193 TIME TURNING(1993) |
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